―――   「乱菊後編」ギン×乱菊  著者:笹葉様   ―――



「酷いコトしよんなァ。」
聞き覚えのある声。ぼうっとした意識の中、乱菊の瞳に見慣れた
顔がぼんやりと映る。瞳が確りと形を捕える事ができずに、輪郭が
ぼやける。涎の零れた唇から声を出そうとしたが、上手く喉から
出てくれない。
「‥‥ン‥」
ちゃんと名前を呼べなかった。
だが、呼ばれたほうはすぐに答えた。
「あらら、そないなカッコで苦しげにボクの名前なんか呼ばんでよ。」
ヤラしい気分になってしまうやないの。市丸ギンは斬魄刀を虚に突き
刺したままそう言い、そのまま刀を垂直に引き上げる。
虚の頭部が真っ二つに割れ、断末魔の声があたりに響き渡った。

巨大な舌は無数に散らけ、だらりと力無く重力に従う。
乱菊の身体を吊っていたそれも例外ではなく、乱菊ごと落ちていった。
四肢を捕らえるその舌に力はもう無いのに、乱菊は触手を解くことも、
動くことも出来なかった。手足が痺れている。
落ちる。
「神鎗」
ギンの手から斬魄刀の切先が、乱菊めがけて放たれた。

ガキィンッ、‥金属と岩のぶつかる音と共に、背中にべしゃり、という
水気を伴った感触が走る。腕を捕らえる触手が刃に射され、吹き出た液体が
乱菊の髪を汚く濡らした。神鎗で触手ごと岩に突き刺されたが、触手の一部が
クッションの役割を果たして乱菊を助けたのだった。最悪のクッションだが、ケガはない。
「‥っと‥マシな助け方‥ないの‥?」
目の前に立った男を力無く睨む。そいつは、憎らしいほど涼しい顔で答えた。
「急いでたんやから、堪忍してえな。」
足元を見ると、わずか地上から一尺ほどの岩壁に乱菊は磔にされていた。
もう少し遅かったら危なかったのだ。
「‥りがと‥」
乱菊がぽつり、とギンに向って言う。
途端に緊張が緩んだ。
「‥あれ‥キミひょっとして、泣いとんの?」
瞳は涙で滲んで、ギンの顔がよく見えなくなっている。しかし乱菊は強気に
泣いてない、と言い放つ。だが。
「ただ、ちょっと‥怖かったのよ。」
泣いてないと虚勢は張れたくせに、乱菊はあまりにも正直にギンに答えてしまった。

そらそうやろなァ‥、言いながらギンは触手から溢れる血を乱菊からぬぐい、
その髪と肢体をそっと撫ぜてから下を見やった。すらりと伸びた形のいい脚の内側から、
汁気の通り道が乱菊の細い足首まで流れている。
「めっちゃお漏らししとるで。エエ年して‥」
「こ‥ッこれは違うわよ!」
漸くしっかりと出るようになった声で、乱菊は赤くなって馬鹿と叫んだ。
わかっとる、わかっとる。ギンはそう笑って、足首からその後を上に辿り、
その流れの元となった場所を撫ぜ始めた。
「あッ‥!」
半透明だった千切れた腰布は、虚の血で染まりかけている。
ギンは、虚もまだ侵入しなかったそこに手を忍ばせ、花弁に指を挿しいれた。
もう一方の腕で、片足を持ち上げ脚を開く。
「ちょ‥ちょっとッ‥ギ‥んぅっ‥!」
全ての指を有効に使い、這わせ、弄り、掻き出す。既に濡れすぼったそこは
指の動きを円滑にさせ、新たなぬめりを生み出す。
「ッはぁ‥あぁん!あっ‥!やぁ‥ッ」
両腕は相変わらず縫い付けられた虚の舌に絡め取られたままで、自由が利かない。
脚から触手は既に落ちているが、今は自分を助けた男によって開かれて弄られている。
ギンが舌を胸に這わせた。

乳房に付いた汗と血をすべて舐め取るかのように、ゆっくりと、執拗に、舌先、舌の腹を
使って乱菊の白い乳房を揺らしながら舐める。
汚れた血は拭われて、元の白く、美しい乳房に戻って行く。
だが肌が上気してピンク色に段々とそれは染まっていく。
汚された胸の谷間も舐め上げられる。チャラ‥と胸元の首飾りを鼻先に引っ掛け、
ギンは愛撫を続けた。乱菊は、ギンの舌の熱っぽさを感じて、熱い息を吐き出す。
下から上へ。乱菊の少し大きめの、しかし色形のよい乳輪のすぐ脇をつつぅー、と
長くギンの舌が通る。
「はっ‥んぅ‥ッ」
ぞくぞくと肌が粟立ち、乱菊は胸を震わせ身を捩じらせる。
両腕は頭上で戒めを解かれていないままである。露になっている腋の下をギンは
そのまま舐めあげた。
「ひぁ‥ッ!」
びくん、と乱菊は反応する。
「塩っぱいね。」
ギンが白い肌から舌を剥がして、自分の唇を舐めて呟く。
「馬鹿‥」乱菊が力なく、そう返す。瞳はもう涙ではなく潤んでいる。

「ん?何て?」
ちゅぷ、という音と共に、ギンは答える必要の無い質問をした。
「んぁあ!」
乱菊が一際大きな嬌声で答えた。
舌での愛撫の間に、ギンはゆっくりと指を中に挿れていた。その指をくい、と動かした
音だったのだ。乱菊の声を皮切りに、ギンの細く長い指が続けて侵入してくる。
二本‥三本。狭々しく中で蠢き、掻き回す。ジュク、ジュブ、と乱菊に聞こえるように
派手な音を指は奏でる。
ギンは残っていた親指で、乱菊の敏感なところをつめ先で持ち上げ、指の腹で擦った。
「ッぁあ!‥あぁ!ァあン!アッ、あァ!アッ!あぁあ!」
蕾を刺激する親指の動きに合わせて、乱菊があられもない声を上げる。
落ちていく雫がぱたぱた、と死装束に音を立てる。更にギンの唇が、そびえ立った乳の頂を襲う。
チュプ、ちゅうぅッと大きく音をさせて、乱菊の薄紅の突起は口の中で舌と踊らされ舐られ、
燃えるようになっていく。彩りも熱も。
「ひぁッ、あッ、はぁあん!」
甘い声とともに、ギンの指の間からプシャァ、と乱菊の熱いものがこぼれ出た。
だが、ギンの手は一向に休まない。カリっと乳首に歯を立てられ、そして唇で優しく甘噛みされる。
舌先でつつかれて、舌と唇に挟まれ包まれる。
「ッああァ!あはぁッ‥はぁん‥ァん‥‥ぁあん‥」
快楽の波が大きく小さく、絶え間なく乱菊に押し寄せ、熱い飛沫が黒衣の砂浜にひたすらに零れていく。
「凄いなァ。べちょべちょやね。」
ギンは、自分の指と手のひらにべっとりと纏わりついた乱菊の愛液を、そそり立つもう一方の乳首と
その周辺にたっぷりと塗りたくった。指で乳首を挟み引っ張りながらピタピタと塗りつけ、親指で
乳首を滑らせ転がす。乱菊の声が高くなる。
「はァ‥ッ‥ぁあん、‥ッん‥!‥もォ‥‥あぁッ‥だ‥めェ‥」
息も絶え絶えに伝えると、
「欲しい?」
とギンは涼やかな顔でそう言った。
憎らしい。何があっても表情ひとつ変えないこの顔。昔から。今も。このときすらも。

グイ、と両腿を強く開かれ、乱菊の豊かな尻がぱっくりと二つに割られた。
腰布はもうとっくに取り払われ、大事なところは一糸も纏わずに大きく開いて
ギンの前に全てを晒している。開かれた赤い部分からはぬめりを持った液体が
恥ずかしげもなくびちゃ、びちゃ、と涎を滴らせている。
「あぁ、こらアカンわ。ちゃあんと栓したげんと。」
乱菊は羞恥でカッと赤くなり脚を閉じようとしたが、がっしりと掴まれたギンの腕は
びくとも動いてくれなかった。
乱菊がギンをじろりと睨む。
「大丈夫よ。虚と違うてボクは怖ァないよ。」
そう言ってニッタリとギンは微笑んだ。

あんたを怖いなんて思ったことはない。
ただ、わからないだけ。
わからないことが怖いだけ。

「腕‥ほどいてよ‥」
荒い息に混ぜてギンに告げる。こんな状況ではまるで許しを請うているかのようで、
なんだか少し嫌な気分になった。ギンはまた笑って言った。
「厭や、勿体無い。」
乱菊が反論するより早く、ギンの一物が侵入した。

指ではない乱暴な一本の感触。ギンという男の見た目通り、少し細めの、だがしなやかに
恐ろしく逞しく、やや長めのそれは一気に乱菊の奥を貫いた。
「r‥ッッあ!ぁあん!!」
たっぷりと濡れていた乱菊の蜜壷はいとも容易くギンのものを受け入れて、ヒクン、ヒクンと締め付ける。
なじませる必要はもう無く、ギンは何も言わずにに腰を動かした。ギンが無口な分だけ、乱菊は声を上げ続けた。
「ッはっ、ぁあッ、あぁんッ!ぁん!あぁ‥ッ」
暫く運動を繰り返しながら、ギンはいつもの涼しい顔に、ほんの少しだけ汗を浮かばせて乱菊に囁いた。
「ええなァ、めっちゃキレーやで、副隊長サン。」
名前‥呼んでよ‥快楽のうねりと同時に奥の方の醒めたところが呟く。
最後に名前で呼ばれたのはいつだったか。思い出せない。
「んッ‥!ふぅッ‥あんッ!んっ!」
悔しいから、こっちも名前は呼ばないでいてやる。
そんな乱菊の気持ちとは裏腹に快楽の波は意識を奪うほどに強くなる。
「んァあ!あぁあん!あぁッ!いッいィ‥ッ!」
吊られている乱菊はギンの上に位置し、必然的に下から突き上げられる形になっている。
乱菊の大きな胸が声に少し遅れてぶるん、ぶるるん、と上下し、痛みが残る。
柔らかくて気持ちの悪い背中の触手が衝撃に沿ってびちゅ、びちゅと音を立て、
繋がっている処から出るジュブ、ジュップという音と淫靡で不快な協奏をする。

「ッぅん!んああ!ァああッ!」
乱菊は激しく悶え、興奮しているが、吊られているだけに自分からは何も出来ない。
声と、腰の動きと表情だけで答えるしかできない。
酷くもどかしく、焦燥感に駆られる。そして、ただ、ただギンによって昇らされていく。
それがなんだか、とても悔しい。
「ひィあ‥アッ、あぁん!あはぁッ!」
ズプッ、ズップと卑猥な音を続け乱菊の中をギンがかき乱す。
乱菊の目の前がふっ、と白くなり、大きな波に呑まれた。

「ァッあああッ!ギッ‥ギンッ!いぃ‥ッあッああっ‥ああァッあぁ―――!!」
ついに敗北しギンの名を呼び叫んだ乱菊の身体が、大きく痙攣して勢いよく潮を噴いた。
きゅぅぅ、と乱菊の中が絞まり、同時にギンも乱菊の中に吐き出す。ギンは小さく
「ッ‥ハッ‥。」と息をついた。

ハァ‥ハァ‥と熱い息を漏らして乱菊は吊られたままぐったりとしている。
数匹の虚を打ち倒し、最後の虚にいたぶられて、そしてギンと。疲労は限界に達していた。
「あらら、大丈夫かいな。」
やっぱり変わらない涼しい顔でギンが乱菊の髪を撫ぜる。
アンタの所為でしょ‥乱菊はそう言いたかったが面倒くさくてやめた。
代わりにプイ、と顔を背けてやった。
「なァ。」
ギンが、その横顔に声をかける。
「キスしてもええ?」
「はァ?」
突然のその言葉に驚いて、乱菊はギンを見た。触るときも、舐めるときも、
挿れるときだって予告無しだった癖に。
目を合わせたギンのその顔はやっぱり変わらない。昔も、今も。このときも。
だけど。
乱菊は、今日はじめて笑ってギンに言った。
「キス‥して‥‥。‥させて。」

少し高い位置の乱菊に、ギンは足の爪先を伸ばして近づく。
だがほんの少しだけ、高さが足りない。
「あぁ、こら困ったなァ。」
「アタシを降ろせばいいじゃない」
いい加減腕も感覚が無いほどに痛い。キスのお預けを食らったことも併さりイライラと乱菊は言う。
ギンは、台に成りそうなものをキョロキョロと探しながら、こう言った。
「ええー。厭や、勿体無い。」









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